Re:Memory

Story

ねえ、ちょっと聞いてくれる? 15年前、うちの家族にね、それはそれは可愛いラブラドールがやってきたの。メープルっていうんだけど。きっかけはね、旦那さんが「大型犬がいい!」って言い出したから、カインズホームに行ったんだよね。そしたらね、ダンボールに入ったままのメープルがいて、もう旦那さん、一目惚れ!あっという間に家族の一員になったんだ。

でもね、メープルったら、かなりの暴れん坊(笑)。まるで反抗期の女子中学生みたいでさ、訓練士さんも「こりゃ大変だ」って言うくらいだったんだよ。落ち着いたのはね、なんと10歳近くになってから!

最初は家の中で飼ってたんだけど、とにかく外に出たがるの。「出せ、出せ!」って吠えるから、しょうがなく外犬に。そしたら、もう二度と家には戻ってこないの(笑)。外での生活がよっぽど気に入ったみたい。

うちの弟、弘文にとっては、メープルは兄弟みたいな存在だったんだよね。一人っ子だから、メープルがいてくれたおかげで我慢とかを覚えることができたって、母として感謝してる。

それにね、メープルは大型犬だから、弘文と取っ組み合いをして遊んでたの。旅行にも一緒に行ったし、ホントに家族の一員だったなぁ。

特にね、うちの父がメープルを溺愛してたの。庭仕事をする時、いつもメープルがそばにいて、父の汗をペロペロ舐めとるんだよ。父は「やめろ!」って言うんだけど、嬉しそうだった(笑)。

忘れられないのがね、3.11の時。父とメープルが散歩中に揺れを感じて立ち止まったら、すぐ後ろのブロック塀が倒れてきたの!あと2歩進んでたら、2人とも危なかったんだよ。

メープルがいたから、家族との思い出がいっぱいできた。父との思い出、弘文との思い出…。私はね、メープルに役割を与えて接してたから、家族の絆がより深まったんだと思う。メープルはね、私にとって、本当に大切な家族だったんだ。

Memory